「『日本のカッパドキア』吉見百穴が人気」

本日の東京新聞朝刊に埼玉県吉見町横穴墳群「吉見百穴」が人気を回復しているとの記事が掲載されていた。吉見町では世界遺産にも認定されているトルコの奇岩「カッパドキア」に準えて宣伝に力を入れている。カッパドキアはトルコ中部のアナトリア高原にあり、ローマ時代には地下に教会や都市が作られている。

地理的に解説すると吉見町もカッパドキアも凝灰岩なので、柔らかく加工しやすいという特徴を持つ。関東地方は関東ローム層と呼ばれる凝灰岩の地層に覆われている。この300万年の間に富士山や箱根山、浅間山、榛名山、赤城山、男体山などが噴火した際の灰が積もって固まった地層である。また、トルコ国土の大半を占めるアナトリア高原も日本と同じ新期造山帯に属し、火山活動や地震活動が盛んなことで知られる。安定陸塊では見られない光景である。

「食リサイクル100%に挑む」

本日の東京新聞朝刊に、トヨタ紡績でフードロスをなくすため、社員食堂の残飯を微生物で分解させ、発生したガスで発電、さらに、窒素やリンなど農業に必要な成分を含む微生物の消化液を、肥料として近隣農家に提供するプロジェクトが始まったとの記事が掲載されていた。

江戸時代の徹底したリサイクルの現代版という内容である。フードロスは地理の授業でも重要なテーマである。以下は、消費者庁のホームページから転載した内容である。日本の年間のフードロスが、世界の食糧支援量を超えているという事実にしっかりと向き合いたい。

食品ロスとは、まだ食べられるのに廃棄される食品のことです。

日本では、まだ食べられるのに廃棄される食品、いわゆる「食品ロス」は522万トン(2020)。

これは、世界中で飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食料支援量(2020年で年間約420万トン)の1.2倍に相当します。

また、食品ロスを国民一人当たりに換算すると”お茶碗約1杯分(約113g)の食べもの”が毎日捨てられていることになるのです。「もったいない」と思いませんか?

大切な資源の有効活用や環境負荷への配慮から、食品ロスを減らすことが必要です。

「移民船難破59人死亡」

本日の東京新聞夕刊に、アフガニスタンやパキスタンからの移民を乗せた船が、イタリア沖で難破したとの記事が掲載されていた。授業でも触れたが、この10年近く、中東や北アフリカからの移民が働き口と安心な暮らしを求めてEUに不法に入国するケースが相次いでいる。特にアラブの春以降、激増したシリア難民の受け入れを巡って、EUを二分する大問題へと発展していった。

これに類似したニュースを、3学期末の授業の中で紹介した。本来は正規のルートで難民として保護されるべき人々が危険を犯してまで密入国しなければならない現状を放置する政治の方がおかしいのである。難民の問題は難民自身が問題なのではない。難民を産んでしまった国と、難民を受け入れない国の司法制度の問題として捉えていかなくてはならない。

「処理水海洋放出準備着々」

本日の東京新聞朝刊に、福島第一原発事故の汚染水の海洋放出に関する意見交換会の様子の記事が掲載されていた。経済産業省側は「今春から夏頃」にかけて放出を開始する前提ありきで話を進めているので、地元の漁業関係者との議論が平行線を辿っているという。

しかし、「ちょっと待てよ」と言いたい。福島県沖から放出された汚染水は亜熱帯循環の海流の流れに乗って北米大陸の方まで流れていくことが分かっている。実際、東日本大震災の津波で流された物がカリフォルニア州で発見されている。

公海に流してしまえば、誰も文句を言わないという発想と、北朝鮮のミサイルがEEZの内外に落ちたことを殊更に非難する姿勢は、いささか矛盾するのではないだろうか。もちろん、北朝鮮政府がミサイルを飛ばすことを良しとしているのではない。  北朝鮮のミサイルに反応するのと同じ熱量で、この福島第一原発の汚染水が議論されなくてはならない。

現在、福島第一原発の建屋に残された燃料デブリ(溶け落ちた核燃料)を水で冷やし続ける作業が行われている。冷やさないと、どんどん熱が溜まっていき、やがては爆発を起こすからである。しかし、一体事故後、どのような状態で溜まっているのかという確認すらとれていないのが現状である。放射能が強すぎて人間が近づくことができないのだ。だから原始的に水で冷やし続ける作業が10年以上に渡って続いている。その汚染水は1〜3号機合計で1日に100t発生しており、すでに敷地内の処理水タンクの96%が埋まっている。

さきほど「ちょっと待てよ」という言葉を用いたが、「すでに待ったなし」である。燃料デブリを取り出すまであと20年とも30年とも言われる。それまでずっとトリチウムを含む処理水を流し続けるのか。私たちは、北朝鮮の核ミサイル以上に危険極まりない第一原発事故に向き合わなくてはならない。その現実を伝えられる授業を目指したい。

「シリア支援行き届かず」

本日の東京新聞朝刊記事より。
トルコ・シリア大地震で、トルコには各国から支援が入っているが、震災被害が著しいシリア北西部のアザズやイドリアには意図的に支援物資が回っていないという。

アラブの春以降に激化した内戦については授業で触れたところである。
詳細はネットの情報から引用したい。アラブの春やイスラム教内の派閥、シリア内戦の展開など、地理総合の授業を受けた人は理解できるところだろうと思う。こうした記事の背景を理解できるようになると、地理だけでなく、歴史や政治経済の授業も面白くなるはずである。

シリア内戦のきっかけはアラブの春と言われていますが、アラブの春の火種となったのがジャスミン革命という民主化運動です。これは2010年12月にチュニジアで起こっており、その波が中東諸国へ波及しました。

この民主化運動はやがて近隣アラブ諸国へ広がっていき、2011年にアラブの春へと発展。エジプトでは30年続いたムバーラク政権、リビアでは42年続いたカダフィ政権が崩壊します。他にもサウジアラビアやモロッコ、イラク、アルジェリアでも同様の民主化運動が活発化し、この動きはシリアへも広がっていきます。

シリアではアサド大統領による独裁政権が40年にも渡って続いていたため、国民は長年社会経済への不満を抱いていました。そして2011年、アラブの春を皮切りにシリアでも抗議運動が始まりました。

この中心となったのが政権から虐げられていたスンニ派の人々です。

スンニ派を中心とした抗議運動はシリア全土に広がり、シーア派を主とするアサド政権政府軍とスンニ派を主とする反政府軍との間で内戦へと発展したのです。