「ユダヤ礼拝所銃撃 7人死亡」

本日の東京新聞朝刊に、エルサレムでパレスチナ人の若者がユダヤ礼拝所を銃撃したとの記事が掲載されていた。ちょうど地理総合の授業で取り上げたばかりなので、少し解説を加えたい。

授業でも説明した通り、エルサレムはユダヤ教、キリスト教、イスラム教の3つの宗教の聖地となっており、国際連合はどこの国にも属さない都市だとしている。そのため日本を含む世界のほとんどの国は、イスラエル国内の大使館を地中海に面したテルアビブに置いている。しかし、米国だけは2017年に駐イスラエル大使館をテルアビブからエルサレムに移している。つまり、エルサレムこそがイスラエルの首都だというイスラエル政権の主張を認めたことになっている。米国の軍事的支援もあり、イスラエルはかつてないほどの軍事国家となっている。

授業中にも触れたが、イスラエル国家の視点に立てば、テロを行ったパレスチナ青年は加害者で、礼拝所を銃撃されたユダヤ教徒は被害者である。しかし、パレスチナ人の視点から見ると、圧倒的な軍事力をもってパレスチナ人の暮らしそのものを破壊するイスラエルこそ加害者である。地図帳や世界史の知識を生かして、多様な視点を持つことが高校地理には大切である。

また、イスラエルは地中海に面しており、夏は亜熱帯高気圧にすっぽりと覆われるので、6〜8月の降水量は0mm、9月も0.3mmと砂漠並みに降雨がない。地球の動きも合わせて理解しておきたい。

共通テスト地理A

以下に、共通テスト地理A本試験の解説を掲載しました。
解きにくい問題が多いように思いました。センター試験に比べて、プレートや造山帯、気候区分などの知識を訊ねる問題は少なく、防災に関する文章読解が増えてきました。
ソファで寝転んでパソコン画面で30分くらいで解いたら、5問くらい間違えました。見直しにどれくらいの時間を使えるかで、点数が変わってきますね。

https://school.jpn.org/wp/wp-content/uploads/2023/01/GGAP.pdf

「移動店舗 花盛り」

本日の東京新聞朝刊に、コロナ禍で注目を浴びた「キッチンカー」などの移動店舗の特集が掲載されていた。こうした移動店舗はコロナ禍が終了しても、商店街が少ない都心の再開発地区や過疎化が深刻な地方の集落などで一定程度の需要がある。どちらも車を持っていない家庭が多く、徒歩や自転車などで気軽に買いに行ける商店がない。そうした地域で固定の店舗を持つのは地価上昇や売上減少などの不安要素が大きい。記事にあるような移動店舗であれば、出前や出張のような顧客一人一人に応じた移動コストがかからない。

東京でも埼玉でも、昭和の頃にたくさんあった屋台営業がほとんど見られなくなった。キッチンカーなどは令和の屋台としてこれから業績を伸ばしていくのではないだろうか。コンビニには真似できない商品やサービスに特化することと、チェーン店ではできない暖かい応対が求められる。

「アフガンのタリバン政権 中国と油田開発契約へ」

本日の東京新聞朝刊に、アフガニスタンのタリバン政権と中国企業の間で油田開発契約の話が進んでいるとの記事が掲載されていた。ネットで調べたところ、10年ほど前から中国企業が開発に動いていたとのことである。

アフガニスタンは昨夏米軍が撤退してから、混乱に拍車がかかっている国である。失業率は50%近くあり、一人あたりのGDP(2021年)は370ドルほどである。もちろんアジアの中では最低で、世界でも南スーダンやブルンジと同じ最下位に位置する。3890万人の人口のうち、1840万人に緊急の人道支援が必要な状態である。農業も工業も不振で、輸出品目の第1位がドライフルーツ、第2位が薬草となっている。いくら金銭的な支援を行ってもアフガニスタンを救うことはできない。

そうした中で、今回の記事はアフガニスタンにとっては渡りに船である。油田開発は中国企業が一手に担うため、アフガニスタンの雇用に繋がらないとか、資源外交はタリバン政権の懐を潤すだけで庶民は切り捨てられたままなどの不安は残るが、国全体としての経済を下支えしてことにはなるであろう。

しかし、なぜ中国が積極的にアフガニスタンに関わるのであろうか。
アフガニスタンはアルプス・ヒマラヤ新期造山帯にあるため、原油や天然ガスが眠っていると推定できる。2010年の報告によると、原油・天然ガスだけでなく、ウラン、ボーキサイト、石炭に加え、クロムなどのレアアースを含め、1兆米ドルの鉱物埋蔵量があるとのことである。しかし、実際の信憑性について疑問の声もある。鼻息荒く「取らぬ狸の皮算用」を弾いても、「大山鳴動して鼠一匹」となりかねない。

記事にもある通り、中国はアフガニスタンの資源以上に、インドに対抗して「一帯一路経済圏」を進める上で、アフガニスタンやパキスタン、イランを通る貿易ルートの確立が欠かせない。地図で確認すれば分かるが、中国からアフリカへの最短ルートとなる。中国マネーの借款で苦しむスリランカやラオス、モンテネグロの二の舞にされてしまうのであろうか。