「イスラエル閣僚 聖地訪問が波紋」

本日の進学講習で紹介した、東京新聞朝刊記事です。
エルサレムはキリスト教、ユダヤ教、イスラム教の3つの宗教の聖地です。過去のエルサレムを巡る歴史から、1947年に国連による永久信託統治となったところです。イスラエルの首都は公式にはテルアビブです。

現在のイスラエル政権はユダヤ教原理主義的と言ってもよいほどの右寄りであり、エルサレムをイスラエルの土地だと主張している。イスラエルの極右政党「ユダヤの力」の党首のベングビール氏が、個人という立場でエルサレムを訪問するのは、信教の自由に照らして何ら問題ない。しかし、イスラエル国家の閣僚として公式に訪問した場合は意味合いが異なる。その点を弁(わきま)える必要がある。

日本にも信教の自由と政教分離原則を巡る議論がある。例年8月15日前後に新聞やテレビを賑わす靖国参拝問題である。靖国神社は紆余曲折あって、太平洋戦争でA級戦犯とされた「犯罪者」を「神」として合祀している神社である。その靖国神社を個人の立場で私的に参拝するのは問題ない。信教の自由が保証されているからである。しかし政治家や官僚の立場で靖国神社を公式に参拝するということは、国家として靖国神社を讃美するという意味を含むことになる。極めて政治的な話となってしまう。公務員という立場である以上、私的と公的な立場は意図して使い分けないと、個人の範疇を超えて問題が膨れ上がってしまう。

今回のイスラエル閣僚のエルサレム訪問は、パレスチナ側やアラブ諸国が反発するだけの話ではない。国連の総会決議で決まったことに違反しているので、国連として公式に課題として取り上げ、二度と繰り返すことのないように釘をさすべきである。決して第三者になってはいけない。