「エルドアン氏 優勢か」

本日の東京新聞朝刊にトルコ大統領選挙の決選投票の情勢が報じられていた。
エルドアン氏も移民に不寛容な政策をとっているのに、野党候補は更なる移民排除を訴えているという。エルドアン氏の前任のアブドゥラー・ギュル前大統領(在任 2007年8月28日 – 2014年8月28日)はバランスの取れた大統領で、まさにイスタンブールの置かれている位置に象徴されるように、欧州と中東の接点、イスラム教勢力とキリスト教勢力の緩衝材としての役割を果たしてきた。(クルド人に対する姿勢は評価しないが)

授業の中でも紹介したが、エルドアン前大統領はシリアやアフガニスタンの難民がトルコ国内に留まらないように、ギリシア国境付近へ強制的に追い出し、EUに難民を押し付けてきた。イスラム教の盟主であるトルコを頼ってきた難民にとっては手酷い仕打ちである。そのエルドアン政権よりもさらなる排外主義が打ち出されようとしている。

ウイシュマさんを見殺しにしたとも言われている名古屋入管を抱える日本も遠い国の話ではない。つい先日も日本維新の会の梅村みずほ議員が、国会の場において日本の滞在資格が甘いと口汚く批判したばかりである。週2回の地理総合の授業であるが、難民を取り巻く国内外の現状を伝えていきたい。

「過疎化進む足尾 観光に活路」

本日の東京新聞夕刊に授業中に紹介する予定の足尾町の過疎化に関する記事が掲載されていた。
ちょうど授業でも紹介するところだったので、興味深く読んだ。

大正時代には38,000人が暮らしていた町だが、現在では1500人余りに過ぎない。富岡製糸場や北九州の明治期の工場が世界遺産となって観光客を集めているのに肖(あやか)ってか、大正時代の産業遺産を観光の目玉にしようと、日光市が先導して再開発を進めている。

足尾銅山の坑道跡も公開されており、トロッコ列車や温泉などもあり、十分に観光地としての可能性を感じる場所である。北九州の世界遺産登録でも話題になったが、産業遺産は負の側面も併せて紹介したい。田中正造に代表される足尾銅山鉱毒事件や川俣事件なども含め、日本の行き過ぎた産業革命で苦しんだ農民にも焦点をあてた遺産登録を期待したい。

「スーダン 周辺国の思惑」

本日の東京新聞朝刊に、衝突が続くスーダン情勢に関する記事が掲載されていた。スーダンは国土面積が188万平方キロで日本の5倍と広い。人口は4300万人でアラブ人の他、200以上の部族が混在する多民族国家である。言語もアラビア語を公用語とするが、多数の言語が話されており、宗教もイスラム教の他、キリスト教や伝統宗教も信仰されている。

2011年にスーダンから南部のキリスト教カトリック信者の多い南スーダンが独立している。しかし、分離後も紛争が続き、スーダン、南スーダンとも一人当たりのGNIは飢餓ラインの1,000ドルを下回っており、世界最貧国に位置付けられている。

外務省のデータによると、輸出品目に石油、食用油、金、家畜(羊)などがあり、輸出・輸入とも貿易相手国は中国がトップとなっている。さらに港湾施設や農業施設なども中国の投資で作られており、スーダンには還元されず、貧困が加速する結果となっている。今回の衝突で使用されている武器・弾薬も中国製が占めているという点を書き加えておきたい。

「36ヵ国 重大な飢餓」

本日の東京新聞朝刊に、ウクライナ侵攻以降、重大な飢餓が拡大しているとの記事があった。一昨年までロシアは小麦や大麦、馬鈴薯、甜菜、ひまわりの種などの農作物の輸出大国であった。また、ウクライナは「欧州の穀倉地帯」と呼ばれ、肥沃な黒土のチェルノーゼムが広がっており、小麦や大麦、とうもろこしなどの穀物が世界中に輸出されていた。

しかし昨年以降ロシアやウクライナからの輸出が止まり、特に貧困国で飢餓が深刻となっている。国連世界食糧計画(WFP)では「飢餓とは、身長に対して妥当とされる最低限の体重を維持し、軽度の活動を行うのに必要なエネルギー(カロリー数)を摂取できていない状態」と定義している。

記事にはないが、栄養不足の人口割合が35%を超える国として、アジアでは北朝鮮、アフガニスタン、イエメン、イラク、アフリカではマダガスカル、ソマリア、ルワンダ、コンゴ民主共和国、コンゴ共和国、中央アフリカ、リベリア、中米のハイチなどが想定されている。

いずれも日本からは心理的に遠い国だが、対岸の火事では済まされない。記事にもある通り、世界で生産される食糧の3分の1が廃棄されているという実態に向き合わなくてはならない。農作物輸入大国の日本だからこそ、授業の中でフードロスはきちんと取り上げていきたい。